物語を狩る種族(The Story Hunters)

読んだ本の感想を書いているブログです

ジョン・D・マクドナルド「罠に落ちた男」

 引き続きエラリイ・クイーン編『クイーンズ・コレクション1』から、ジョン・D・マクドナルド「罠に落ちた男」(甲賀美智子訳)を読みました。ページ数にして17ページ、短くてすぐに読み終わる文章量です。

 今までに著作を読んだことは無いのでよく知りませんが、巻末の作家紹介によると、作者のジョン・D・マクドナルドは1916年にペンシルヴェニア州に生まれ、第二次世界大戦後にパルプマガジンでミステリ、冒険小説、SF、ファンタジーなど様々なジャンルの短篇を書いており、「トラヴィス・マッギー」シリーズで人気を博したとか。六十二年にはアメリカ探偵作家クラブ(MWA)の会長を務めるなど、アメリカの推理小説の発展に貢献した巨匠のようです。Amazonで検索してみると、邦訳された単独著書で一番新しいものは2007年に刊行された「トラヴィス・マッギー」シリーズの『薄灰色に汚れた罪 (海外ミステリGem Collection)』。このシリーズが日本でどれくらい紹介されているのかは知りませんが、その一作目が映画化されるという話もあり(http://www.cinematoday.jp/page/N0064704)、本国での根強い人気がうかがえます。あ、今回読んだ短篇はシリーズものではありません。念のため。

 

[あらすじ]

 トラック輸送会社の共同経営者であるジョウ・コンロイは買物の帰り、金髪の二十代ぐらいの男レイに銃で脅されてサンダウン・モーテルまで運転させられる。銃を突きつけられたまま、コンロイがモーテルの一室を開けると、レイの仲間の男女、ディズとローラリイがいた。彼らは、不在を怪しまれないようコンロイの妻と同僚に電話をかけさせた後、コンロイをテープで拘束する。どうやら彼らは現金強奪計画のために車を必要としていただけのようだが……。

 

[感想]

 エラリイ・クイーンが「クールで歯切れのよい犯罪小説」と評するように、短くすっきりとまとまったお話となっています。何の変哲もない市民が犯罪に巻き込まれて……というプロットは現実味がある一方、驚きは少なく、クイーンがなぜこの話を選んだのか正直言うとよく分かりません。なにか琴線に触れるものがあったのでしょうか。ただ、物語の結末部分おけるコンロイの言葉には自虐的な響きがあり、なんというか、不思議な余韻を感じさせて終わるところは良かったです。