物語を狩る種族(The Story Hunters)

読んだ本の感想を書いているブログです

チェスタトン「三人の黙示録の騎士」

 今日読んだのは、ボルヘスの編んだ叢書「バベルの図書館」の一冊、G・K・チェスタトンアポロンの眼』(国書刊行会刊、訳者は富士川義之)から「三人の黙示録の騎士」です。なぜ題名に「黙示録」が入っているのかよくわかりませんが、実のところそこまで知りたいわけでもないので調べていません。

 著者のギルバート・キース・チェスタトンは「ブラウン神父」シリーズで有名。『The Man Who Was Thursday』(邦訳は『木曜日の男』と、あと新訳が『木曜日だった男』という題名で出ているようです)も面白いと聞いているので、いつの日か読もう読もうと思っているところです。

 

[あらすじ]

 たまに奇怪な意見を放つ紳士、ポンド氏。彼が友人にある逆説的な話を語る。部下があまりに忠実であるため、望みどおりに事の運ばなかったグロック将軍の話。

 戦争時、まだ騎兵が活躍していたころ、人気のある詩人ペトロフスキーがポズナニでプロシャ軍に捕まった。当局も処刑すべきかどうか決めあぐね、解放しようとするところ、詩人を危険とみた将軍は即時処刑すべしと指令を出した。しかしその直後、処刑延期令状が出され、その伝令が途中で死んだために、詩人は釈放されたという。

 「延期」令状を持った伝令が「途中で死んだ」。なのに、なぜ詩人は処刑されなかったのか? 部下が忠実であったために、将軍の望みどおりにならなかったとは一体どういうことなのか?「パラドックスでも何でもない。これは単純な事実である」と、ポンド氏はその真相を友人に語る……。

 

[感想]

 チェスタトンはクラシックな推理小説が大好きな人たちの間では有名も有名なようですが、私はこの短編が初チェスタトンでした*1。クラシックすぎて地理や歴史にうとい私にはもしかしたらよく分からんかもしらん、と思いながら読んだのですけど、杞憂でした。

 良くできたミステリーで、あまり注意深くない読者である私にもすっきり理解できました。この逆説的なお話を作り上げるある単純な事実、ポンド氏が述べる前置きの中にあるさりげない事実が効いています。現在でも広く読まれている古典の作家というのは、特に推理小説の場合には、時を経てもその妙がわかる作品を書いている作家であるのかもしれません。

 あまり書き慣れていないというのと、ミステリーのネタを割らないようにしたせいか、なんだかふわふわ曖昧な感想になってしまいました。まああんまり力を入れて書いても長続きしないのでこれぐれいで。

 

[追記(2014年10月2日)]

 この『アポロンの眼』以外では、「ちくま文学の森」の14巻『ことばの探偵』と創元推理文庫の『ポンド氏の逆説』で読めます(『ポンド氏の逆説』では「三人の騎士」というタイトルに。英語版ウィキペディアチェスタトンの項目を見てみると「The Three Horsemen」と表記されているものもあり、それに準拠しているようです)。
 英語に抵抗が無い人なら、プロジェクト・グーテンベルグ・オーストラリア(日本でいう「青空文庫」です)というサイト
http://gutenberg.net.au/ebooks05/0500421h.html

で『The Paradoxes of Mr.Pond』が読めます。

 

*1:初エラリーとか初クリスティを覚えている人はいるんでしょうかね。初ドイルは『四つの署名』だったと思います