物語を狩る種族(The Story Hunters)

読んだ本の感想を書いているブログです

ウンベルト・エーコ死去のニュースに際して(あと『エーコの文学講義』のすすめ)

www.asahi.com ウンベルト・エーコが亡くなり、個人的には、『論文作法』『エーコの文学講義』『バウドリーノ』を読んでいたことを思い出しました。 中でも『エーコの文学講義』(あるいは『小説の森散策』)はとくに読んでほしい一冊で、すこぶる面白いので…

2015年に読んだ本

年も明けたので去年のおさらいを。面白かったものもそれほどでもなかったものも。去年はSF小説ばっかり読んでました。 今年は瀬名秀明『デカルトの密室』とか、サミュエル・R・ディレイニー『バベル-17』とか、ロジャー・ゼラズニイ『伝道の書に捧げる薔薇』…

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最近なんとなくツイート数の推移を眺めてみました。

福澤徹三『忌談 終』

福澤徹三さんの『忌談 終』を読みました。飛行機に乗る機会がありまして、そんなときは角川ホラー文庫の新刊を一冊買うことにしているのです。これは著者の集めた怖い話が35編収められている本。ここ最近読んだ怪談蒐集系の本では一番面白かったかも。以下、…

アガサ・クリスティー『そして誰もいなくなった』

2010年に早川書房のクリスティー文庫で出版された新訳版『そして誰もいなくなった』(青木久恵訳)を読みました。 有名なタイトルで、いつか読もうと思いつつも今まで読んでいなかった作品。20年以上生きていて読んでいなかったのが不思議なくらいですね。ど…

Lavie Tidhar「What Do We Talk About When We Talk About Z――」

忙しさにかまけてブログの存在を忘れていましたが、忘れていても問題ないといえば問題はありませんね。それに忙しくても本を読むくらいの余裕はありました。もしかしたら本を読むのに時間を取りすぎているのかもしれませんけれど。 “It is raining. It seems…

Gene Wolfe「The Woman Who Went Out」

研究のために出かけたところで『F&SF 1985 June』*1を見つけ、せっかくなのでジーン・ウルフの短篇「The Woman Who Went Out」を読みました。まあ英語力に難ありなので、電子辞書片手に読みました。全部で5ページぐらいの分量で、それほど難しい単語も無かっ…

レイモンド・カーヴァー「愛について語るときに我々の語ること」

レイモンド・カーヴァーの短篇集『愛について語るときに我々の語ること』(村上春樹訳)より、表題作を読みました。最近、アカデミー賞受賞で話題の「バードマン」という映画にも劇中劇として出てきているお話です。それにラヴィ・ティドハーの短篇を読んだ…

ジョン・D・マクドナルド「罠に落ちた男」

引き続きエラリイ・クイーン編『クイーンズ・コレクション1』から、ジョン・D・マクドナルド「罠に落ちた男」(甲賀美智子訳)を読みました。ページ数にして17ページ、短くてすぐに読み終わる文章量です。 今までに著作を読んだことは無いのでよく知りませ…

レックス・スタウト「殺人鬼はどの子?」

エラリイ・クイーン編『クイーンズ・コレクション1』より、レックス・スタウト「殺人鬼はどの子?」(山本やよい訳)を読みました。 『クイーンズ・コレクション1』はEQMM(エラリイ・クイーンズ・ミステリ・マガジン)の年刊アンソロジー80年版『ELLERY QUE…

去年買った雑誌のブックガイド

本を読んでるけど感想を書く気力がない+ブログを始めたので月一回ぐらいは何かしら書いておきたい、ということで去年買った雑誌のブックガイドについてあれやこれやメモ的に記しておこうと思います。買っただけでほとんど読んでいないものもあるので、この…

今年読んだ、印象に残った本

年末なのでまとめ的なことを。だいたいは面白かった本です。今年は小説関係の本が多めでした。そして今年発売の本は少ないです。 ウンベルト・エーコ著、和田忠彦訳『エーコの文学講義 小説の森散策』 再読、精読、図解の重要さがよく伝わる一冊。 トーマス…

Neil Gaiman 「Click-clack the Rattlebag」

ニール・ゲイマンの「Click-clack the Rattlebag」を読みました。ニール・ゲイマンはアメリカン・コミック『サンドマン』の原作者で、ファンタジー小説家です。著作としては『スターダスト』とか『コララインとボタンの魔女』とか。と、いうような情報は知っ…

新しいと思ったアイデアがすでに実行されていることの多さって、どれくらいでしょうね?

昔、お風呂に入ったとき、ミステリー作品に関するアイデアを思いついたことがあります。それは全く無関係である事件の被害者たちにある共通点(たとえば、ある新興宗教を示すアイテムとか、パソコンの履歴に残った怪しいサイトとか、それらしく目立つもの)…

アンディ・ウィアー『火星の人』

アンディ・ウィアー著『火星の人』(小野田和子*1訳)を読みました。本国で出版されて話題になっていたとき*2から、お、これはすごく読んでみたいぞ、と思っていたのがようやくです。 あらすじ。NASAの宇宙飛行士マーク・ワトニーが不慮の事故により一人ぼっ…

SFマガジン2014年12月号(R・A・ラファティ生誕100年記念特集)

ラファティ特集が読みどころのSFマガジン2014年12月号を読みました。 ラファティ読んだことないんですけど、私の頭の中の「読んだことない作家ワールド」で妙な存在感があったので今回の特集に飛びつきました。Amazonで即予約です。SFマガジンの700号記念の…

キジ・ジョンスン「26モンキーズ、そして時の裂け目」

今日読んだのは創元海外SF叢書の三冊目、キジ・ジョンスン『霧に橋を架ける』から「26モンキーズ、そして時の裂け目」*1(三角和代訳)です。この著者の作品を読むのは初めてですが、前評判をネットで見かけて面白そうだと思い手に取りました。この短編は世…

『MONKEY vol.4』予約特典の生原稿

10月に入り忙しくなったせいか、本は読むものの中々その記録を書く元気がありません……。いやあ本を読む元気はあるんですけどね。文章がね。なんだか借金をしている気分です。 しかし個人的にテンションが上がる出来事がありました。柴田元幸編集の文芸誌『MO…

チェスタトン「奇妙な足音」

国書刊行会刊、G・K・チェスタトン『アポロンの眼』から、「奇妙な足音」を読みました。 物語は もしもあなたが、あのエリートのクラブ「十二人の本物の漁師」の会員が年に一度のクラブの夕食会に出席しようとヴァーノン・ホテルに入って来るのに出会ったと…

高橋克彦「緋い記憶」

今日はミステリー文学資料館編『ホラーミステリー傑作選 ふるえて眠れない』の高橋克彦著「緋い記憶」を再読しました。この短編集はそのタイトルどおりホラーの傑作ばかりで、いやもう本当に面白いアンソロジーとなっています。筒井康隆、半村良、宮部みゆき…

藤井太洋「常夏の夜」

今日読んだのは、第五十三回日本SF大会なつこん記念アンソロジー『夏色の想像力』の藤井太洋著「常夏の夜」です。この短編が10月にハヤカワ文庫JAで刊行される『楽園追放 rewired サイバーパンクSF傑作選』に収録されると知り、なんとなくその前に読んでおこ…

ジャック・リッチー「エミリーがいない」

今日は『新エドガー賞全集』から「エミリーがいない」(ジャック・リッチー著、山本光伸訳)を読みました。『新エドガー賞全集』は、ハヤカワ文庫から出ていた「アメリカ探偵作家クラブ傑作選」の14巻目であり、1981年から1988年までのアメリカ探偵作家クラ…

ジーン・ウルフ「ソーニャとクレーン・ヴェッスルマンとキティー」

今日は扶桑社から刊行されたアンソロジー『魔法の猫』の「ソーニャとクレーン・ヴェッスルマンとキティー」(ジーン・ウルフ著、柳下毅一郎訳)です。『魔法の猫』はそのタイトルどおり、「猫」がテーマの翻訳もののアンソロジー。 この短編の著者ジーン・ウ…

井上雅彦「抜粋された学級文集への注解」

今日は井上雅彦*1監修の書き下ろしホラーアンソロジー「異形コレクション」の45冊目、『憑依』の井上雅彦著「抜粋された学級文集への注解」を読みました(と言っても再読ですが)。 現在までに50冊近くが刊行されている異形コレクションで、私自身はそのうち…

ルーシャス・シェパード「竜のグリオールに絵を描いた男」

今日は新潮文庫の短編集、ルーシャス・シェパード著『ジャガー・ハンター』の「竜のグリオールに絵を書いた男」(内田昌之訳)を読みました。なぜこの本を読んだのかというと、元々ルーシャス・シェパードという名前だけを知っていて*1、なんとなく読んでみ…

ブログを始めてみたものの

なにぶん初めてなもので……。と心の中で言い訳しつつ恐る恐る手を出して読書感想を書いてみたものの、経験に乏しいのでどういうスタイルで書いていったらいいのか暗中模索な感じです。 やっぱり書きなれている人はそれぞれの「型」ができているんですかね。 …

チェスタトン「三人の黙示録の騎士」

今日読んだのは、ボルヘスの編んだ叢書「バベルの図書館」の一冊、G・K・チェスタトン『アポロンの眼』(国書刊行会刊、訳者は富士川義之)から「三人の黙示録の騎士」です。なぜ題名に「黙示録」が入っているのかよくわかりませんが、実のところそこまで知…

はじめに

ブログ始めました 今日からブログを書くことにしました。 何故そんなことを考えたのか。 第一に本を読むのが好き*1で、その記録をつけたいと思ったため。一冊の本についてあれこれ書くのは結構労力がいる。でも短編ひとつぐらいなら読むのも書くのもそんなに…