物語を狩る種族(The Story Hunters)

読んだ本の感想を書いているブログです

Gene Wolfe「The Woman Who Went Out」

 研究のために出かけたところで『F&SF 1985 June』*1を見つけ、せっかくなのでジーン・ウルフの短篇「The Woman Who Went Out」を読みました。まあ英語力に難ありなので、電子辞書片手に読みました。全部で5ページぐらいの分量で、それほど難しい単語も無かったように思うのでさくさく読み進められたといえば読み進められたほうでした。古い本なので紙が真っ黄色になっていましたね。

 The Internet Speculative Fiction DatabaseによるとLatro(Soldier)シリーズの一篇らしい*2のですが、そのシリーズの小説を読んだことが無いので正しいのかどうか分かりません。どこかハヤカワでも国書刊行会でもよいのでLatroシリーズ翻訳していただければいいのですが……。しかしまだThe Wizard Knightも出てないので、英語を勉強して原書に挑戦したほうが早いかもしれません*3。いつになるのかはわかりませんけれど。

 さて、このお話の舞台は古代ギリシアアテネです*4。そこで結婚しているのに夫からまったく何も買ってもらえないどころか少しばかりのお金すら与えられない不幸な妻が、メイドの協力を得て、夫にばれないよう夜遊びに出かける話です(と言っても間違いではないはず)。妻とメイドは、妻が寝室からいなくなってもばれないように、土を湿らせて作った泥人形を代わりに置いて行くのです。ですがお金がないのである問題が生じ、泥人形を使うのをやめることになりました。一方、妻が泥人形を置いていたあいだ、寝床を共にしていた夫は「妻を抱いてもまるで粘土の人形だ」と嘆きます。そんなときにライバルからあるまじないを教えてもらい、今度は夫が夜な夜な寝室を抜け出すようになるのですが……。

 というのがだいたい途中までのあらすじ。オチはホラーな感じでした。というか、土をこねて作った人形を使うあたりからオカルトめいてはいますが。リンゴの木が物語の中で重要な役割を果たすのですが、なぜリンゴの木なのか気になるところです。そしてなぜあんなラストになったのか。物語の舞台設定もからんでいそうなので、ヘロドトスの『歴史』なんかも読んでみたいですね。まあ読んだからといって何かわかるかどうかもはっきりしませんけれど、一読した後に疑問が残るお話でした。どう解釈するか、まだ何かありそうだな、と深読みしてしまいます。いくつか固有名詞が出てくるのでそこが手がかりに……なるのかどうか。あるいはシリーズの長編と関係しているのかも。

 

 

*1:http://www.isfdb.org/cgi-bin/pl.cgi?61235

*2:Latro - Series Bibliography

*3:実は「新しい太陽の書」も『ピース』も最近出た『ジーン・ウルフの記念日の本』もまだ読んでいないので、先に読むとしたらそっちになるでしょう

*4:AreopagusとかBabylonianとか出てくるので